ある会社が、過去に元本保証と高配当をうたって全国から約6億円を集めて事業を停止し、代表者は出資法違反の罪で有罪判決を受けた。こうした新聞報道を受け、計画的な倒産の可能性があるなどとする記事がブログに掲載されています。会社の代表者は、記事の内容が名誉権またはプライバシーを侵害するとして、記事の削除を求めました。
名古屋地裁令和6年8月8日判決(判例タイムズ1530号223頁)は、「公的な立場にあるわけでもない原告の社会的評価を低下させる意見又は論評である本件記事を今後も長期にわたり掲載し続けることを正当化するに十分な程度に公衆の正当な関心事であるとはいえず、もはや公共の利害に関する事項に係るものとはいえない」として原告の請求を認めました。記事の掲載から11年以上が経過していること、有罪判決による刑の言渡しは5年間の執行猶予期間を経過したことにより効力を失いその時点から更に4年半以上が経過していること、などが理由として挙げられています。
近年、インターネット上で大量に蓄積されている情報の中には個人の人格権を侵害するようなものも含まれています。記事を残しておくことの公益性と、記事により侵害される個人の利益をいかに調整するかは難しい問題です。一つの参考判例として紹介することとしました。