観光バスが交通事故にあって修理が必要となり使用できなくなった場合、バス会社は事故の相手方に対して、事故がなければ得られていた収益(休車損害)の賠償を求めることができます。これに対し、事故の相手方は、事故に遭ったバスが使えなくても代替車両によって収益をあげられたなどと反論することがあり、その場合、バス会社全体のバス稼働率や運行状況などを検討して損害額が認定されます。
名古屋地裁令和5年6月28日判決(判例タイムズ1517号127頁)は、民事訴訟法248条に基づき、原告バス会社が請求した休車損害の一部を認めました。同法248条は、損害が生じたことは認められるものの、損害の性質上損額を立証することが極めて困難な場合に、裁判所が相当な損害額を認定することができるという規定です。本判決は、事故がなかったとして当該観光バスがいつ運行の用に供されるかという仮定を置くこと自体が困難である点を指摘し、損害の立証が困難な事案にあたると判断しました。
もっとも、民事訴訟法248条の適用がされる場合、実損害や相場からは大幅に減額された金額しか認められないというのが実情のようで、本件では、原告の請求額の5%相当額のみが認められています。