大河ドラマ『光る君へ』を機に、初めて源氏物語の現代語訳を通読しました。谷崎潤一郎や瀬戸内寂聴、近年では角田光代といった作家による訳ではなく、国文学者である著者の訳を選んだのは、原文に忠実でかつ読みやすいという評を見たことがあったからです。
物語の内容に言及すると数行ではまとめきれないため、訳の感想に絞ります。登場人物の語り(会話文)を読むと、性別や年齢、地位の高さ、対話者との関係性などが自然と頭に入ってくるように配慮された、絶妙な訳であることが分かります。全10巻の各巻末の解説によれば、紫式部の語り(地の文)においても、適宜、場面背景などについて補足的な説明が挿入されていて、読みやすく配慮された訳になっているとのことでした。
通読は相当な苦行だろうという事前の予想に反して、現代小説を読んでいるようにすらすらと読み進めることができました。何より源氏物語の面白さを体感できたので、また機会があれば、別の訳による物語世界を味わってみたいと思います。