髙橋秀実『ことばの番人』

わたしたちが本を通して目にする文章は、校正者による厳重なチェックを経ています。活字文化を陰で支える校正者たちの話を聞いていると、漢字と仮名が混じる日本語の使い方は、実に奥深く、知らないことばかりだということに気づきます。明治時代の国語辞典『言海(げんかい)』を270冊(種類)も持っているという校正者にはただ驚かされるばかりです。

古事記を編纂した太安万侶は、序文において、『旧辞』『先紀』の誤りを正す、すなわち校正をするよう命じられたと書いています。「はじめに言葉があった」とする聖書とは異なり、日本では「はじめに校正があった」ことになります。日本国憲法をはじめ法律の条文は誤植だらけという指摘には思わず苦笑いしてしまいました。

この文章を書き終えた後、いつもより入念に誤字脱字などのチェックをしていますが、他人の目を通して校正してもらうことが何より大事なのは間違いなさそうです。