小島庸平『サラ金の歴史-消費者金融と日本社会』

シェイクスピア「ヴェニスの商人」のシャイロックやドストエフスキー「罪と罰」の老婆など、古今東西、金貸しには強欲というマイナスイメージがつきまといます。日本の消費者金融も、債務者を自殺に追い詰めるほどの過酷な取り立てが社会問題化した時期がありました。

本書は、こうしたサラ金の負の側面だけでなく、貧困層を金融的に包摂する、つまりセーフティーネットを代替するという側面に注目します。高度経済成長期に電化製品をこぞって買い求める団地住民の資金需要、サラリーマンが情実人事で出世するための交際費など前向きな資金需要、不況下で賃金が低迷する中で家計のやりくりに苦心する主婦の後ろ向きな資金需要、という借り手の需要の変遷が書かれた部分は、特に興味深く読むことができました。

終盤に指摘されていた、SNSを使った違法な個人間金融や給与債権買い取りサービス、個人の信用情報がスコア化される中国の芝麻信用など、現代の金融技術革新がはらむ危険性については、今後気をつけなければならない課題だと思います。