今村翔吾『塞王の楯』

戦国時代末期、関ケ原の戦いの前哨戦である大津城の戦いで、石垣職人穴太(あのう)衆の主人公と鉄砲職人国友衆が対決する様が描かれます。

石垣職人の主人公は、絶対に破られない城を作れば互いに手出しができなくなって戦乱がなくなると考え、鉄砲職人は、どんな城でも落とせる砲を作ればそれが抑止力となって戦いが終わると考えます。一方で、石垣や鉄砲の進化によって戦が起き血が流れているのではないかという、文字どおり「矛盾」した悩みを双方が抱えています。泰平の世の到来を願う者同士が激突する城攻めの場面は、とてもスリリングでした。

最強の矛によって戦争を防ぐという考えは、現代の核抑止論につながるものですが、果たしてそれで平和な世界を実現できるのか。ウクライナに侵攻するロシアは核保有大国ゆえに強気の攻勢に出ているのかもしれないと思うと、暗澹たる気持ちになります。