主人公の作家キョンハは、指を切る重傷を負った親友の映像作家インソンから、実家に残してきた小鳥の命を救ってほしいと頼まれ、大雪の中済州島に向かいます。済州島は、1948年、軍と警察によって民間人3万人以上が虐殺された「四・三事件」の舞台となった場所。キョンハは、「四・三事件」を生き延びたインソンの母親の記憶を辿っていきます。
キョンハが現実に目にしている白い雪と、虐殺された人たちに降りかかった雪は何が違うのか。タイトルの「別れを告げない」は、風化させないという意味をもつといいます。過去の凄惨な歴史の記憶を決して風化させない、作者の強い思いが感じられました。
韓国の作家による小説を読んだのは私自身初めてでした。まさに今日、作者が2024年度のノーベル文学賞を受賞したという報に接したのを機に、本作品を紹介することにしました。