ミヒャエル・エンデ『モモ』

都会の外れにある円形劇場の廃墟に現れた少女モモには不思議な才能がありました。モモに話を聞いてもらった人は、なぜか悩みがたちどころに解決してしまうのです。そこに現れた時間泥棒、灰色の男たちは、町の人たちに対して、時間の無駄遣いをやめて時間貯蓄銀行に時間を預けるよう、言葉巧みに仕向けます。やがて、モモの親友である観光ガイドのジジを含め、人々は心の余裕をなくし時間に追われるようになってしまいます。モモは、カシオペイアという亀の導きで時間を司る国の主人マイスター・ホラのもとに向かい、灰色の男たちに立ち向かうという物語です。

現代の資本主義社会を生きる私たちは、「コストパフォーマンス」「タイムパフォーマンス」という言葉に象徴されるように、無駄を省き仕事を効率化させることが常に求められます。便利な生活を享受できるようになった反面、大切なものを失いつつあるのではないか。

「その時間にどんなことがあったかによって、わずか一時間でも永遠の長さに感じられることもあれば、ほんの一瞬と思えることもあるからです。なぜなら時間とは、生きるということ、そのものだからです。そして人のいのちは心を住みかとしているからです。」

充実した人生を過ごすために失ってはならない大切なものについて考えさせられる童話です。