ヨハン・エクレフ『暗闇の効用』

光害という言葉を、本書を読んで初めて知りました。人間は、無知の象徴である暗闇を克服するため、人工の光を作り出して暗闇を追い払ってきました。しかし、暗闇や夜が生物にとってどのような意味を持つか、人工の光が自然界にいかに悪影響を及ぼすか。著者は、コウモリや蛾を始め様々な動物の生態、さらには宇宙の起源にまで遡りながら、光害の深刻さを説いていきます。

今、二酸化炭素の排出削減が地球規模の課題とされていますが、フランスでは大気に放出される光の量を規制する法律が定められていることなど、意外な発見がありました。巻末に挙げられた「暗闇を守るための10箇条」はそれほど難しいルールではありません。日が落ちた後は極力強い光を使わず、また浴びないようにする。ちょっとした心がけから始めることが大事なのかもしれません。

本書でも紹介されている『陰翳礼賛』は、暗がりの美を論じた谷崎潤一郎の名著です。併せて読むと、漆器や和紙、暗い座敷や厠など日本古来の文化のぬくもりを味わうことができます。