三牧聖子『Z世代のアメリカ』

Z世代とは、おおむね1997年から2012年までに生まれたデジタルネイティブ世代をいいます。彼らにとって「豊かで強いアメリカ」はもはや過去のもので、調査によれば、アメリカ人であることを誇りに思うと考える割合が他の世代に比べて突出して低いそうです。

所得格差の拡大、終わらないテロとの戦い、大統領選挙をめぐる混乱、銃乱射事件の続発、中絶の権利の危機など、アメリカが抱える深刻な課題にどう向き合うべきか。本書は、アメリカの現状に対し、保守とリベラルの二項対立を超えた鋭い批判を展開します。そしてZ世代こそが、そうした批判的視点をもっていると指摘します。

著者はあとがきにおいて「国際社会はロシアを批判する一方で、アメリカの秩序破壊的な行動は黙認する傾向にある西側諸国や日本のダブルスタンダードを冷静に見つめている」と述べています。本書刊行後に起こったガザでの軍事作戦を続けるイスラエルと支援するアメリカ。その姿に向けられる国際社会の目を先取りしたかのような言葉です。