カルロ・ロヴェッリ『世界は「関係」でできている-美しくも過激な量子論』

イタリアの物理学者が量子論について書いた本です。私自身、理系分野の知識には疎く、量子論の勉強をしようと思ったわけでもないのですが、日本の仏教思想に大きな影響を与えた古代インドの学者である龍樹(ナーガールジュナ)の「空」の思想が取り上げられているという書評を見て興味をもち、手にとってみました。

さすがに、量子力学に関する学者達の議論の歴史などについて書かれた前半部分は、読み進めるのにかなり苦労しました。ただ、絶対不変の観察者が存在しない以上、ひとつの実験結果も観察者の視点による相対的な見え方にすぎない、だからこの世界はあらゆる相互作用の網だ、という本書の要点については、何とか理解することができました。

「ナーガールジュナの『空』は、じつに心安らぐ倫理的な姿勢を育んでくれる。自分が自立的な実体として存在しているのではない、という悟りは、自身を愛着や苦しみから解き放つ助けとなる。人生は永久に続かず、いかなる絶対も存在しないからこそ、意味があり、貴重なのだ。」

まるで哲学書を読んでいるかのような文章が、印象に残りました。