A会社の代表取締役であるXは、A会社がB会社を買収するのに伴ってB会社の債務について連帯保証をしました。しかし、その後B会社は運営資金が不足して翌年破産することとなり、Xは、B会社の債務を代位弁済することになりました。B会社の買収に際しては、A会社の取締役で弁護士資格を有するYが、A会社を主導して交渉にあたっていました。
会社法429条1項によれば、会社(A)の取締役(Y)が悪意又は有過失により違法な業務執行をし、これによって第三者(X)に損害を被らせたときは、YはXに対して損害賠償責任を負うことになります。
東京地裁令和6年4月9日判決(判例タイムズ1533号210頁)は、YがB会社の財務状況に関する調査を怠ったこと、さらにB会社に財務的な不安はないとして買収をXに強く勧めたことなどを理由として、Yの損害賠償責任を認めました。判決は、Yが弁護士資格を有していることを挙げ、善管注意義務については高度のものが求められることも併せて指摘しています。