入管職員の被収容者に対する暴行の違法性

今年9月9日のコラムで、入管施設における人権侵害の実情について書かれた本を紹介しました。今回取り上げる裁判例は、入管収容場から入管センターへの移送に抵抗した被収容者に警備官が暴行を加えた事案で、国家賠償法に基づく損害賠償が認められました。

東京地判令和4年6月23日判決(判例タイムズ1512号220頁)は、問題となった2つの暴力行為(入管収容場内の居室において被収容者に手錠を掛け全身を持ち上げて入出所手続室まで移動した行為と、入出所手続室内において強い力で被収容者の頭部を床に押さえ付けた行為)のうち、前者については入国者収容所等の規律や秩序を維持するために必要かつ相当な限度にとどまる一方、後者についてその限度を超え違法であると判断しました。

先日の報道によれば、名古屋刑務所で刑務官が受刑者に暴行を加えていた事件に関連し、刑事施設視察委員会制度を見直す必要性が指摘されているようです。入管施設においても、被収容者の人権や尊厳に配慮した施策の整備が望まれます。