取締役解任の訴え

株式会社の取締役が職務に関し不正な行為をした場合、株主総会で過半数の賛成があれば当該取締役を解任することができます(会社法339条1項)。過半数の賛成が得られなかった場合でも、3%以上の議決権を有する株主(少数株主)は、「職務の執行に関し不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実」があるとして、取締役解任請求の訴えを提起することができます(同854条1項)。

東京地裁令和3年4月22日判決(判例タイムズ1503号209頁)は、韓国の関連会社の業務執行に関し、韓国の刑法上の業務上背任罪等で有罪判決を受けて確定した取締役について、少数株主による解任請求を棄却しました。上記判決は、取締役の犯罪行為に対する関与形態が従属的消極的で、被害弁償により財産的被害が回復されていることなどを挙げ、法令に違反する「重大な事実」に当たるとまではいえないと指摘しています。

解任の訴えは、株主の多数意見では解任されなかった取締役の任務を、裁判所の判断によって強制的に解く制度です。職務上の犯罪行為につき有罪判決が確定したからといって、直ちに解任請求が認められるわけではないことに注意が必要です。