吉原真理『親愛なるレニー レナード・バーンスタインと戦後日本の物語』

20世紀を代表する音楽家、レナード・バーンスタインに数多くの手紙を送り続けた二人の日本人がいました。一人はバーンスタインの音楽に心酔しファンであり続けた天野和子。もう一人は、音楽だけでなくバーンスタインその人を愛し、彼の仕事の一翼を担うようになった橋本邦彦。何の予備知識なく読み始めましたが、二人の手紙を通して、バーンスタインの音楽、平和そして人間に対する愛情、情熱の深さを窺い知ることができました。

あとがきで言及されているとおり、プライベートや心の内をさらけ出した手紙を公開することについて、当事者の了解を得るのに当初は苦心されたようです。著者が当事者の信頼を得る努力を重ね、親密な手紙の公開を通して偉大なマエストロの評伝が完成したことに、大きな拍手を贈りたいと思います。