商事売買における買主の検査通知義務と契約不適合責任

衣服の製造販売を業とするⅩ社は、Y社から従業員用ユニフォームに縫い付けるバーコードネーム(13桁の数字を表すバーコードを印刷した布製ラベル)を購入しました。しかし納入を受けてから約1年後にバーコードネームの不備が見つかったため、Y社に連絡した上で、補修費用などの損害賠償請求をしました。

Y社は、商法526条2項ただし書を根拠に損害賠償請求は認められないと反論しました。同条項は、買主は商品の引渡しを受けた後検査して6か月以内に不具合を通知しなければ売主に契約不適合責任(瑕疵担保責任)を追及できないとする規定です。

東京高裁令和4年12月8日判決(判例タイムズ1521号131頁)は、Y社は納入後6か月以内の時点までに商品の不具合を認識していた点を踏まえ、商法526条3項に基づきY社の主張を排斥し、X社の請求を一部認容しました。同条項は、売主が悪意の場合には買主から6か月以内の通知がなくても責任を負うという規定です。本判決は、正確なバーコードを印刷せず不具合のある商品を納入したY社には重大な過失が認められると認定し、重過失がある場合は悪意と同視できると判断しました。