固定残業代制度

固定残業代制度とは、労働者が実際に残業をした時間にかかわらず、毎月定額の残業代が支給される給与制度をいいます。この制度を利用する場合、基本給部分と残業代部分が、例えば20万円と5万円などと明確に区別され、さらに、固定残業代部分を超えた残業が行われた場合は、超過分を支払わなければなりません。

ある運送会社の給与体系は、毎月一定の⑴基本給と⑵残業代が支払われるが、⑵残業代は、①(実際の残業時間に応じて支払われる)時間外手当部分と②調整手当部分に分かれており、「②調整手当部分=⑵固定の残業代-①時間外手当部分」の計算により決められることになっていました。

この給与体系に関し、最高裁令和5年3月10日判決(判例タイムズ1510号150頁)は、⑵残業代のうちどの部分が実際の残業時間に応じて支払われる時間外手当かが明確になっていないとの判断を示しました。たしかに、①時間外手当部分は、毎月変動する現実の時間外手当であり、⑴基本給と区別されているものの、⑴基本給と⑵残業代という全体でみると、基本給部分と残業代部分は区別されていないことが問題視されたものと考えられます。