地方公社住宅の賃料減額請求

地方住宅供給公社(地方公社)は、法令(地方公社法施行規則)の規定によって賃貸住宅の賃料を変更することができます。地方公社が賃料を増額改定した住宅に居住する賃借人が、賃料増減額請求を定める借地借家法32条1項の規定により、家賃額の確認と家賃差額の返還を求めた事案があります。

原審東京高裁は、賃料の変更に関する地方公社法施行規則は借地借家法32条1項に対する特別の定めであるから、公社住宅の使用関係に借地借家法の適用はないと判断しました。これに対し、最高裁令和6年6月24日判決(判例タイムズ1526号74頁)は、借地借家法の適用を認め、原審に審理を差し戻す判断をしました。

今後、他の公社住宅においても、家賃改定の有効性が問われる事態が考えられますが、公社住宅側もそれなりの根拠(次に抜粋する法令)に基づいて家賃の改定をしています。「地方公社は、賃貸住宅の家賃を変更しようとする場合においては、近傍同種の住宅の家賃、変更前の家賃、経済事情の変動等を総合的に勘案して定めるものとする。この場合において、変更後の家賃は、近傍同種の住宅の家賃を上回らないように定めるものとする」。改定の有効性について、裁判所の判断が注目されるところです。