夫婦が別居した場合、収入が少なくまたは子の監護を続ける配偶者(多くの場合妻。以下「権利者」といいます。)は、収入が多くまたは子と離れて生活する配偶者(多くの場合夫。以下「義務者」といいます。)に対して、婚姻費用を請求することができます。婚姻費用の相当額は、双方の収入や子の年齢などの事情によって定まります。
義務者が相当額を任意に支払わない場合、権利者は、①口頭で支払を求める、②内容証明郵便など書面で請求する、③婚姻費用分担調停を申し立てる、などの方法をとることが考えられますが、どの時点以降の婚姻費用の支払が認められるのでしょうか。
宇都宮家裁令和2年11月30日審判(判例タイムズ1497号251頁)は、権利者が義務者に対し、内容証明郵便をもって婚姻費用分担を求める意思を確定的に表明した時点から支払を受けられると判断しました。
すなわち、別居後に婚姻費用が支払われない場合、権利者が義務者に①口頭で支払を求めるだけでは婚姻費用の支払は認められないとされています。②支払を求める内容証明郵便を送付し、念のため、③義務者の住所地を管轄する家庭裁判所に婚姻費用分担調停を申し立てるのがよいでしょう。