宅建業法に違反する名義貸し合意の効力

XとYは、不動産の売買取引に関し、①宅地建物取引士の資格を有するYの名義を無資格のXが用いた上でXが不動産の売却先を選定する、②売却代金はXが取得しその中から名義貸し料300万円をYに支払う、③Yは買主から受領した売却代金から購入代金等の費用及び名義貸し料300万円を差し引いた残額をXに支払う、という合意(本件合意)をしました。

その後、ある不動産について、Aを売主、Yを買主、代金1億3000万円とする売買契約、さらに、Yを売主、Bを買主、代金1億6200万円とする売買契約が締結されました。Xが本件合意に基づきYに対し2300万円余りの支払を求めたところ、Yは、本件合意は無効だと主張して一部の支払を拒否しました。

この点について、最高裁令和3年6月29日判決(判例タイムズ1493号17頁)は、無免許者が宅地建物取引士から名義を借りてした取引による利益を両者で分配する本件合意は、公序良俗に反し無効と判断しました。

行政法規に違反する合意については、一般的に、法律違反であることを理由として直ちに無効になるものではないと理解されてきました。これに対し、上記最高裁判例は、無免許者が名義を用いて宅地建物取引業を営む行為は宅建業法の採用する免許制度を潜脱するもので反社会性が強いという理由で、本件合意を無効としており、重要な意義をもつ裁判例と考えられます。