川上未映子『黄色い家』

主人公の高校生伊藤花は、母親との極貧生活から抜け出し一人暮らしをするためアルバイトに励むが、必死に貯めたお金を母親の彼氏に盗まれ、家を出る。同じように家に居場所のない少女2人とともに、母親の友人、黄美子さんと共同生活を始め、スナックの経営を始める。やがて、黄美子さんの周りの大人たちの導きによって犯罪に手を染めるようになる。

物語は、黄美子さんが未成年者を監禁する罪を犯したことを報じるニュースを、40歳になった主人公が目にする場面から始まります。子どもを食い物にする悪の支配者。冒頭で想起される黄美子さんのイメージは、読み進めるうちに徐々に変化していきます。主人公に関わる人々は、皆、悲惨な出自や境遇を背負って生きています。彼らは、決して許されない罪を犯しますが、一人一人の必死の生き様や人間模様を見ながら結末を迎えたとき、なぜか温かい人間ドラマを味わった気分になりました。

本作の前に読んだ『夏物語』では、精子提供での出産を望む女性や精子提供で生まれた人の苦悩が描かれていました。二つの作品に共通する印象は、どうしようもない悩みを抱え、答えを出そうともがく登場人物に向けられる作者の眼差しが優しいこと。作者の小説は、海外でも翻訳され評価が高いと聞きます。次作も楽しみです。