平野雄吾『ルポ入管-絶望の外国人収容施設』

2021年3月、名古屋入管施設に収容されていたスリランカ人女性が、適切な治療を受けられないまま死亡する事件が起き、入管行政に対する批判の声が高まりました。これを受け、同年5月、入管法改正案は廃案となりましたが、2023年6月、いったん廃案となった改正入管法が成立することになりました。

2020年10月に発表された本書は、トルコで迫害を受け日本に逃れてきたクルド人家族の苦難や、施設からの解放を求め命がけのハンガーストライキを試みる被収容者の実情などを描きながら、入管行政の問題点を多角的に明らかにします。

問題の根本はどこにあるのかを考えたとき、かつてハンセン病隔離施設で行われた患者に対する人権侵害に言及する本書あとがきに目がとまりました。スリランカ人女性死亡事件の報道を見ても分かるように、被収容者が人間扱いされず尊厳が無視され、そして、実態が闇に隠れているためマスコミや社会が無関心である。ハンセン病や旧優生保護法による強制不妊の問題と同様の病根を、断ち切る努力をしていかなければならないように思います。