年金分割の按分割合

年金分割とは、婚姻中に夫婦が納めた年金保険料納付額に対応する厚生年金を離婚時に分け合う制度です。年金分割には、分割の割合を夫婦が合意によって決める「合意分割」と、2008年4月1日以降の期間において会社員や公務員の配偶者の扶養に入っていた「3号被保険者」が請求する「3号分割」があります。夫婦が婚姻中フルタイムで働いていた場合や、2008年4月より前に会社員や公務員の配偶者の扶養に入っていた者が請求する場合には、合意分割を利用することになります。

合意分割で夫婦が決める分割の割合(按分割合)について争いが生じた場合、裁判所が審判手続で定めますが、半分ずつ(按分割合0.5)と定められるのがほとんどです。「保険料納付に対する夫婦の寄与を同等とみることが著しく不当であるような例外的な事情」がある場合に、0.5とは異なる按分割合が定められたり、申立てが却下されたりすることがありますが、文字どおり極めて稀なケースに限られると言われています。

東京高裁令和4年10月20日決定(判例タイムズ1515号57頁)は、当初から夫婦の協力関係はなく、夫は妻が自宅内に散乱させた大量の物の中で生活することを余儀なくされ一方的な負担を強いられるものであったという事案において、妻による年金分割の申立てを却下した原審判(千葉家裁令和4年4月22日審判)を取り消し、按分割合を0.5と定めています。