衆議院議員総選挙の際、最高裁判所の裁判官の国民審査が行われます。政治家、政党を選ぶときは投票用紙に候補者名、政党名を記入しますが、裁判官については辞めさせる(罷免する)裁判官の名前の上に×印をつけるルールになっています。過去、この制度によって罷免された裁判官はおらず、制度の形骸化が指摘されていました。しかし、近年、夫婦別姓を認めない法制度を合憲とする判断をした裁判官の罷免率が他の裁判官を上回ったことが報道され、最高裁判所裁判官の判断に対する国民の関心が徐々に高まってきたとも言われています。
そのような中で、最高裁令和4年5月25日大法廷判決(判例タイムズ1501号52頁)は、国外に居住する在外国民について国民審査権の行使が認められていないのは憲法に違反すると判断しました。判決文において、「(国民)審査権が国民主権の原理に基づき憲法に明記された主権者の権能の一内容である点において選挙権と同様の性質を有することに加え、憲法が衆議院議員総選挙の際に国民審査を行うこととしていることにも照らせば、憲法は、選挙権と同様に、国民に対して審査権を行使する機会を平等に保障している」と述べられています。
この判決を受けて、令和4年11月、改正国民審査法が成立しました。これまで、投票用紙に裁判官の氏名を印刷して海外に送付するには時間がかかるという課題がありましたが、裁判官の氏名の代わりに告示順を示す数字を印刷することで投票用紙を事前に作成できるようにし、氏名はホームページ等で周知されることになります。