「神がいないこの国で人を操るには、“物語”を使うのが一番いいんですよ」
単行本の帯に書かれたメッセージは、小説中のある登場人物が発することばです。“物語”によって操られた主人公3人がたどり着く結末までの道筋は、ひりひりするほど痛々しい。と同時に、とても他人事とは思えない切迫感を感じます。
冒頭のことばを語る人物、すなわち操られる側の「視野を狭く」しようと操る側は、常に「視野を広く」保っておかなければなりません。しかし視野を広く保っておくのが、生きていく上で果たして善きことなのか。読み進めるうちに善悪の境目が曖昧になってきました。作中で描かれるように、推し活をめぐるファンダム経済なるものが選挙や政治の世界にも浸透しつつあるのかもしれないと思うと、背筋が凍り付く思いがします。
