森村泰昌『生き延びるために芸術は必要か』

世界のSF名作やベラスケスの絵画、夏目漱石や司馬遼太郎の小説などを題材に、現代美術家が「生き延びること」そして「芸術」の意味について考える人生論ノートです。

著者によれば、「商品」は「あったらいいな」の世界であるのに対し、「作品」は「ありえへん」の世界。「作品」が展示されている美術館は、あらかじめわかっていることを確認する場ではなく、「こんなこと、ありえへん」という「わからなさ」が常態である。

『金閣寺』の主人公は最後に「生きようと思った」けれど、三島由紀夫はその勇ましさゆえに生き延びることの拒否を選びました。著者は、生き延びるためには勇ましくあってはならないとした上で、こう述べます。「芸術にできるのは、生き延びることができなかった人びとや出来事に、『わすれないでいるからね』と懸命に孤独なまなざしをむけることだけだ」と。