精神病院の無断離院防止策に関する説明義務

統合失調症のために入院した患者が無断離院して自殺したことについて、患者の相続人が、無断離院の防止策が十分に講じられていないことを患者に説明することを怠ったとして、損害賠償を請求しました。

患者にとって、無断離院の防止策を講じている他の病院と比較した上で入院する病院を選択できたはずなのにその機会を奪われた。高松高等裁判所は、このような理由で病院側に説明義務違反を認め損害賠償の一部を認容しました。

これに対し、最高裁令和5年1月27日判決(判例タイムズ1511号123頁)は、病院側に説明義務違反はないと判断しました。その理由として、当時、多くの精神科病院で無断離院の防止策が講じられていたわけではなく、本件病院において任意入院者が無断離院をして自殺する危険性が特に高いという状況はなかったこと、また、患者は、本件入院中の処遇が原則として開放処遇となる旨の説明を受けており、無断離院の防止策の有無によって病院を選択する意向を有していることを本件病院の医師に伝えていた事情もなかったこと、が挙げられています。