交通事故で死亡した被害者(相続人)は、被害者が将来得られるはずであったはずの利益(収入)について、加害者に対し賠償を求めることができます。先天性の聴覚障害を有していた死亡当時11歳の女児(以下「A」と表記します。)について、聴覚障害のない者の平均賃金と差が生じるかが問題となりました。
原審地裁判決は、Aの労働能力は全労働者平均賃金の85%に制限されると判断しました。これに対し大阪高裁令和7年1月20日判決(判例タイムズ1536号121頁)は、①死亡当時のA固有の聴覚の状態像、②就労可能年齢に達したときのAの労働能力の見通し、③聴覚障害者をめぐる社会情勢・社会意識や職場環境の変化を踏まえたAの就労の見通しを検討して、Aの労働能力を評価すべきとした上で、Aの労働能力は、全労働者の平均賃金から減額されることはないと判断しました。
聴覚障害者について健常者と同等の逸失利益を認めた画期的な例として、メディアでも大きく取り上げられた裁判例を、今回紹介することにしました。
