財産目録に押印のない自筆証書遺言の効力

遺言には、公証役場において公証人に作成してもらう公正証書遺言のほかに、遺言者が自筆で作成する自筆証書遺言があります。自筆証書遺言の作成にあたって、遺言者は、全文、日付、氏名を自書して、印を押さなければならず(民法968条1項)、加除変更の際は、変更した旨を付記して変更場所に署名押印する必要があります(同条3項)。なお、印は実印である必要はなく認め印でも構いません。

平成30年相続法改正により、遺言書に相続財産の目録を添付する場合、財産目録については、自書の必要はなくタイプ印書でもよいことになりました。ただし、財産目録を自書しない場合、目録の全てのページに印を押さなければなりません(同条2項)。

この点について、札幌地裁令和3年9月24日判決(判例タイムズ1490号210頁)は、自書しない財産目録に押印がなかった自筆証書遺言に関し、財産目録の記載を除外しても遺言の趣旨が十分に理解できる場合には、財産目録に押印がなくても遺言全体が無効になるわけではないと判断しました。このように例外的に遺言の効力が認められる場合があるとはいえ、財産目録を自書しない場合、目録の全ページへの押印が必要となるのが原則です。これがない場合には、遺言の効力を争う者によって訴訟が提起され、遺言が無効と判断される危険がありますので、注意が必要です。