藤井一至『土と生命の46億年史 土と進化の謎に迫る』

人間が最先端の科学技術をもってしても作り出せないものが、生命と土。生命の創出には倫理的な議論が伴う一方、土となると科学は雄弁さを失いカオスと認識される。土とは何なのか。冒頭の問題提起がまず刺激的で面白い。「岩石が崩壊した砂や粘土と腐食が混ざったもの」と定義される土について、地球誕生からの歴史が語られます。

専門用語や化学式など難解な部分も多いですが、46億年の地球史、40億年の生命史の謎を解くカギが足元の土にあるということがよく分かります。生命誕生の場が粘土だった、あるいは、粘土は生命の一部だったという仮説には驚かされました。

後半では、原発事故後の土壌調査で分かった水田土壌のもつ力についても言及されます。土という究極の知性とどのように付き合っていくべきか。地球で生きる人類にとって、宇宙に目を向ける前に考えなければならない問題だと思います。