財産分与における住宅ローン債務の扱い

夫婦別居時点において、夫名義の財産が1500万円(自宅不動産が500万円、退職金が1000万円)ある一方、負債が1700万円(住宅ローン債務)ありました。離婚に際し、妻は、自宅と住宅ローン債務を除外して、退職金1000万円を2分の1ずつ分与すべきと主張しました。妻の主張は認められるでしょうか。

離婚後も自宅不動産に夫が居住してローンを支払い、不動産が最終的に夫のものとなる場合には、妻の主張が認められる場合があります。他方、妻が自宅不動産に居住してローンを支払い不動産を取得する場合は、分与時点で通算してマイナス200万円になる以上、退職金1000万円のみを分与すべきとの主張は認められません。

東京高裁令和6年8月21日判決(判例タイムズ1539号60頁)は、上記類似の事案において、不動産を取得する妻の主張を認めませんでした。これに対し「不動産を取得できない配偶者(妻)において、当該不動産からの退去を余儀なくされる上、分与されるべき財産が存在せず、あるいは離婚後の生活が困難となる程度に分与額が少額となるような場合において、他方の配偶者(夫)が、所有名義人として当該不動産の使用収益を継続しつつ、離婚後の収入及び取得財産によって住宅ローン債務を返済することで最終的に負担のない同不動産の所有権を取得し、あるいはこれを処分することで一定の利益を得る相当程度の蓋然性が認められるとき」すなわち夫が不動産を取得する場合には、妻の主張が認められる余地があると判断しています。