勤続30年の公立高校教諭が、職場の歓送迎会の帰りに酒気を帯びて自動車を運転し物損事故を起こしました。県教育委員会は教諭を懲戒免職処分にするとともに、1700万円余りの退職金を全部支給しない処分をしました。
教諭が退職金不支給処分の取り消しを求めたところ、仙台高裁は、3割相当額を支給しないことは違法であるとしました。これに対し、最高裁令和5年6月27日判決(判例タイムズ1513号65頁)は、全部不支給処分は相当であると判断しました。
最高裁が重視したのは、本件非違行為の前年、教職員による飲酒運転が相次いでいたことを受けて、県教委が複数回にわたり服務規律の確保を求める旨の通知を出すなど、飲酒運転に対する懲戒処分についてより厳格に対応する注意喚起をしていたという事情です。
本判決には反対意見も付されており、一度の酒気帯び運転で数十年の勤務期間分の退職金が全く支給されないのは酷ではないかとの考え方もありうるところですが、人命に危険を及ぼす飲酒運転がいかに悪質で重大な非違行為かということを改めて世に問う判決だと思います。