面会交流を実現するための間接強制

婚姻中の一方配偶者(監護親)が未成年の子どもを連れて自宅を出た後、他方配偶者(非監護親)が子どもとの面会を求め、監護親が拒否する事態がしばしば起こります。非監護親が家庭裁判所に面会交流の調停を申し立てると、よほどの事情がない限り、最終的には、調停又は審判手続で面会交流を行う旨が定められます。日時、頻度、時間、引渡し方法等を具体的に特定した定めがあるにもかかわらず面会交流が実現しない場合、非監護親は、間接強制の申立てをすることができます。間接強制とは、非監護親に対して一定の額の金銭(不履行1回あたり数万円)を支払うべき旨を、裁判所が監護親に命令する制度です。

面会交流は親子が直接会って交流するのが原則ですが、新型コロナウイルス感染症が拡大する社会情勢においては、ビデオ通話等による交流が行われることもあります。大阪高裁令和3年8月2日決定(判例タイムズ1499号95頁)は、実際に面会交流ができなかったのは緊急事態宣言発令下の1回であり、ビデオ通話による面会交流も適宜実施されていたという事案において、間接強制を認めた原審家裁決定を取り消し、申立てを却下しました。

心理学的な研究によれば、一方の親との離別は(特に幼年の)子どもの心身に悪影響を及ぼし、これを軽減するために非監護親との交流が有益だと考えられています。間接強制によっても面会交流が必ず実現できるとは限りませんので、仮に子どもが拒否的な態度を示したとしても、監護親が面会交流の重要性を理解し、その実現に向けて努力することが重要です。