交通事故を起こしたときの救護義務

「交通事故があったときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員…は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じ」なければなりません(道路交通法72条1項)。

人身事故を起こした者が、すぐに事故現場に戻ったものの、被害者を発見できないまま、飲酒運転の事実が発覚することを恐れて、コンビニエンスストアに赴いて口臭防止用品を購入、摂取しました。この事案で、原審東京高裁判決は、上記の行動に要した時間は1分余りで移動距離も50m程度だから、一貫して救護義務を履行する意思を保持し続けていたとし、救護義務違反は認められないとしました。

これに対し、最高裁令和7年2月7日判決(判例タイムズ1535号115頁)は、被害者の発見、救護に向けた措置を講ずる必要があったのに、これと無関係な買物のためにコンビニエンスストアに赴いており、その時点で救護義務に違反したと判断しました。人身事故を起こした場合は、文字どおり「直ちに」負傷者の救護を行わなければならないことを肝に銘じておく必要があります。