労災保険の休業補償給付

業務に起因してうつ病などの精神疾患を発病し仕事を休んだ場合、労災保険金(休業補償給付)が支給されます。休業補償給付が支給されるのは傷病が治癒した時点までで、傷病がどの時点で「治癒」したかが問題になる場合があります。

東京高裁令和6年1月31日判決(判例タイムズ1531号77頁)は、双極Ⅱ型障害に罹患した原告について、原審が治癒と判断した時期では、いまだ治癒の状態に至っていないと判断しました。双極Ⅱ型障害は、軽躁状態とうつ状態の両方が生ずる双極性障害であり、軽躁状態のときは周囲に迷惑をかける程度の言動はみられないという特徴があります。双極性障害を前提とした適切な治療を受けていなければ、治癒していないにもかかわらず治癒したものと誤認されることがあるようです。

双極Ⅱ型障害の特性という医学的な見地に基づく事実認定の差が、第一審と控訴審の判断を分けることになりました。