千葉雅也『現代思想入門』

タイトルを見るといかにも硬派な概説書かと思いきや、読んでみると、いい意味で期待を裏切られます。非常に読みやすい文章で書かれた哲学入門書です。

キーワードは「二項対立の脱構築」。この言葉だけではよく分かりませんが、序文で著者の問題意識が述べられます。人間は歴史的に社会や自身を秩序化し、ノイズを排除して純粋で正しいものを目指してきた。現在も、企業のコンプライアンスをはじめ、「きちんとする」方向へいろんな改革が進んでいる。現代思想は、こうした動きに警戒心を持ち、秩序から逸脱するもの、すなわち「差異」に注目する。人生の多様性、他者性を尊重する倫理として、また、秩序を強化する動きの極致であるファシズム、全体主義に抵抗する意味において、重要な思想だというわけです。

現代思想の代表格としてデリダ、ドゥルーズ、フーコーの思想が紹介された後、大御所ニーチェ、フロイト、マルクスの思想について、現代思想の源流としての位置づけから分かりやすく解説されており、理解が深まりました。

読後、著者が自身の学生時代を自伝的に描いた小説『デッドライン』が文庫化されていたので、併せて読んでみました。マイノリティを自認する著者がドゥルーズを専攻するようになった経緯や思いが伝わってきます。