認知症などが原因で判断能力が減退した(精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある)人について後見開始の審判がされると、成年後見人が選任されます。本人が後見人を選任することに反対し、医師による診断や鑑定が実施できない場合、どうなるのでしょうか。
家事事件手続法によれば、明らかに鑑定の必要がない場合を除いて、鑑定を実施することなく後見開始の審判をすることができないと定められています(119条1項)。東京高裁令和5年11月24日決定(判例タイムズ1524号94頁)は、本人が鑑定に応じないケースで、一定の意思能力があると認められる場合は、鑑定が実施できない以上、後見開始の申立てを却下する判断をしました。
家庭裁判所の実務においては、本人が鑑定を拒否している場合でも、調査官の働きかけや親族の協力を得るなどして本人を説得する取扱いがされるようですが、それでも実施できない場合は、後見開始の審判がされないとしてもやむを得ないと思われます。