土地の所有者が誰であるかは不動産登記簿を見れば分かりますが、登記簿に所有者が明記されていない土地があります。いわゆる所有者不明土地は、土地が管理されずに放置され、隣接地に悪影響を及ぼすなどの問題が指摘されていました。
こうした問題を解消するため、所有者不明土地の管理制度が創設され、令和5年4月に施行されました。土地の利害関係人は管理人の選任を申し立てることができ、管理人は、所有者不明土地の管理を行い、また裁判所の許可を得て売却等の処分を行うことができます(民法264条の3)。
本制度の施行前の事案ではありますが、登記簿の表題部に所有者が明記されていない土地の地上権者として登記されている者が、土地を時効取得したと主張して国を被告として所有権確認訴訟を提起しました。東京地判令和4年4月15日判決(判例タイムズ1514号224頁)は、本件土地が外国人居留地であり国がこれを買い取ったという原告が主張する事実は認められない、国は本件土地の所有者であるとは主張していないから、訴えの利益がないとして訴えを却下しました。本判決は、判決末尾のなお書きにおいて、法令の施行後は、所有者不明土地管理人を被告とする訴えを提起することができる(民法264条の4)点に言及しています。