特別縁故者に対する相続財産分与

死亡した人(被相続人)について、配偶者、子、親、兄弟姉妹など相続人はいないけれども、同居して生計を同じくしていたり、療養看護をしたりしていた者がいる場合、その者(特別縁故者)の申立てにより、特別縁故者に相続財産が分与される制度があります(民法958条の2)。特別縁故者による財産分与請求権は、一身専属的な権利ですので、特別縁故者がその申立てをする前に死亡した場合、その相続人が特別縁故者の地位を承継することはできないと考えられています。

他方、山口家裁周南支部令和3年3月29日審判(判例タイムズ1500号251頁)は、特別縁故者(被相続人の叔父)が申立て後に死亡した事案において、特別縁故者の相続人が、特別縁故者の地位を相続することを認めました。ただし、特別縁故者の相続人に対し各法定相続分に従って分与されるわけではなく、各相続人への分与額は、被相続人や特別縁故者の関わりの有無、程度などの事情を考慮して判断されることになります。

なお、分与される額は、相続財産の全てではなく、被相続人との関係性、世話の程度に応じて評価され、6283万円中1000万円(大阪高裁平成20年10月24日決定)、1億2572万円中一人につき500万円(大阪高裁平成28年3月2日決定)などの額が分与された裁判例があります。