音楽教室における生徒の演奏と著作権

音楽教室のレッスンで生徒が課題曲を演奏した場合、音楽教室の運営者は、音楽著作物の著作権管理者に対して、著作権(演奏権)の侵害を理由に不法行為責任を負うのでしょうか。生徒の演奏に関して、音楽教室の運営者が著作物の「利用主体」といえるかが問題となりました。

最高裁令和4年10月24日第一小法廷判決(判例タイムズ1505号37頁)は、運営者は著作物の利用主体とはいえず、著作権管理者に対する不法行為責任を負うことはないとしました。その理由として、①生徒の演奏は、教師から演奏技術等の向上を図ることを目的として行われるのであって、課題曲の演奏はその手段にすぎないこと、②上記目的との関係では、生徒の演奏こそが重要な意味を持つのであって、教師による伴奏等は生徒の演奏を補助するものにとどまること、③生徒は、上記目的達成のために自主的に演奏するのであって、演奏することを強制されるものではないこと、の3点が挙げられました。

他方、カラオケスナックによる客の歌唱については、①客は、店の従業員による歌唱の勧誘やカラオケテープの範囲内での選曲等を通じて、店の経営者の管理の下に歌唱している、②店の経営者は、客の歌唱を利用して営業上の利益を増大させることを意図している、との理由で、店の経営者は音楽著作物の利用主体であるとの判断がされています(最高裁昭和63年3月15日判決)。